private void GetUniverse(){};

知っていること、興味のあること

不条理なシュレーディンガーの猫

「私、シュレーディンガーの猫ってあんまり好きじゃない」
先輩の里琴(リコ)さんがいつものように唐突に否定から入った。
「人の猫に難癖つけるの、どうかと思いますよ」
「猫ちゃんは悪くない。シュレーディンガーも悪くないけど」
「それか、里琴さんが量子力学の過激派論者だったとか」
「そういう話じゃないの、真面目にやってくれる?」
里琴さんは神妙な面持ちで腕を組み、僕の雑な推理をきっぱりと退けた。

「要は、人々が『シュレーディンガーの猫』のことをあまりにぞんざいに扱うから、いい加減うんざりってわけ」
「はあ」
「なに、その気の抜けた返事」
里琴さんの『世間に物申すモード』にスイッチが入ったらしい。不条理な世の中に対して無規律に湧き上がるちょっとした苛立ちを大げさにして、警鐘をカンカンカンとけたたましく鳴らさずにはいられない性分なのだと、最近本人から力説された。
「みんなね、ものが隠されてるだけですぐ『2つの状態が重なって開けるまでどっちか分からない』とか言い出すんだよ。バカみたい」
「目の前の女の子が下着を履いているかは、スカートをめくって観測するまで分からない」
「うわっ、最低」
「この前見たツイートを思い出しただけですよ」
「サイテーだ」
ついさっきまで人々に向けられていた非難が、急にこちらへ牙を剥いてきた。

軽蔑するような目にいたたまれなくなって何とか話題を変えようとしたが、既に里琴さんの僕への関心はゼロになっていた。
「でもこういうの多くない? 『目に見えない力が働いている』とかさ、力が見えるもんなら見てみたいよね、逆に」
里琴さんも警鐘もカンカンだ。
「いくら料理が下手でも『ダークマター』は生まれないでしょ」
「まあまあ……。あ、それなら『恋愛の方程式』は方程式なのか、とかどうです」
「それ! ムカッとする。ちなみにアレはどちらかといえば不等式だよねえ」
「収入プラス身長プラス顔面偏差値>付き合う最低ライン、ですか」
「サイテーだなあ」
実際にはそれより下があったとしてもサイテーっていいますよね、と返せば余計になじられるのは明白だ。
これもまた世の不条理。

作曲ソフトRenoiseで音楽を遊ぶ話

この記事はTUT Advent Calendar 2018の11日目の記事です。
10日目の記事はこちらです。


はじめに

こんばんは。絶惨研究中のsdmkunです。
アドベントカレンダーは)初投稿です。

記事のネタをだらだらと練っていたら、まとまる前に時間がなくなってしまったので伝えたいことだけを書こうと思います。

昔、ねりあめを買った時に、「ねりあめは練るものだ」以外の情報なしで延々と練っていたのですが闇雲に練ったところで何も起きませんでした。正解は空気を練り込むことで色が白く変わって固まり、飴として食べやすくなるという……。
これは自分が伝えたいことなのでセーフです。

本記事では、"Renoise"という作曲ソフトの話をします。
できる限り面白い部分をかいつまんで書くつもりなので、少しだけお付き合いください。

Renoiseおもしろツアー

Renoise(リノイズ)とは、PC上で作曲ができるソフトウェアです。いわゆるDAW1です。
http://www.renoise.com/
これが一体どのようなものなのか、少し見てみましょう。

実際にRenoise上で作られた曲が流れる画面をご覧ください。2

  • 何故か縦にスクロールする画面
  • ピアノロールがない

他のDAWに親しんでいたり、MIDI打ち込みにDominoなどを使ったことがある方なら違和感を覚えるかもしれません。
「普通は横に垂直線が流れていって、譜面上のノートを鳴らすんじゃないの?」
など。
ないです。
代わりに、音程を表す文字と、音量などを指定する数字が並びます。
因みに数字は16進数で扱います。ここ技術ポイント。

http://www.renoise.com/sites/default/files/images/introduction/feature-tracker-interface.png

  • 追加機材が不要

Windows, Mac, Linuxの32/64bitそれぞれで問題なく動作します。
MIDIキーボード不要、PCキーボードだけで曲が作れます。
豊富なショートカットキー割り当て機能でマウスも要らないのでラップトップ作曲もしやすいですね。
高機能なサンプラー付属で、適当な音声ファイルがあれば読み込ませて即いじれます。
オーディオデバイスがなくても動作します(Windowsだと遅延が出ますが)。
もちろん、他のDAWで使えるようなプラグインや機材もあれば、できることの幅が一層広がりますよ!

  • Luaでツールが開発できる
  • MIDI, OSC, ReWire連携

コントローラの自作やライブパフォーマンス、そのほか地味に便利な機能拡張に必要なものが詰まっているので、他のDAWではできないようなあんなことこんなことが色々やれます。
この辺りはとても技術的で面白いことができる要素なのですが、踏み込むとクリスマスまでに戻ってこられないので割愛します。
技術的にRenoiseを使う上で一番の肝を書かないのは本末転倒という感じがしますが……。
Renoiseは音を扱って遊ぶのにとても向いているので、3歳児とかに与えてもいいと思います。

  • デモ版が高機能
  • ライセンスが安い

さあ、とりあえず公式サイトからインストールしましょう。
書き出しを除くほとんどの機能は制限なく使えるので、お試しと言わず。
現在のバージョン3.1から4.1までアップグレードできるライセンスは現在、75USドルです。1万円を切りますね。
メジャーなDAWは2万円とか5万とか10万とかするので、気がついたら買っている程度のお値段なのはありがたいです。

音楽遊び、もしくは自己満足カラオケ

さて、音楽活動といえば、普通は他人に聴いてもらったりして満足させるというような目的が多いと思います。
ですがここでは他の誰でもなく自分が楽しむ為に音楽を作ったり演奏したりすることを考えます。
例えば演奏者が集まって行うジャムセッションなどは、鑑賞されることを第一としていません。
主体が楽しむ為の音楽活動を自分は「音楽遊び」などと呼んでいますが、別に「自己満足カラオケ」という認識でもあながち間違いではないと思います。
別に歌手じゃないのですから、自分が一番気持ちよくなってもいいじゃないですか。

ということで、Renoiseでできる音楽遊びを少しご紹介します。

サンプラー

ボタンを押すと音が出るやつのことです。
サンプラー Renoiseは音声サンプルを扱うことに長けていて、音声なら何でも素材にできてしまうという楽しみがあります。
試しに好きな曲を読み込ませてスライス機能を使うと、キーボードの各キーに音声の断片が割り当てられます。

http://www.renoise.com/sites/default/files/images/introduction/feature-sampler.png

キーを押すと割り当てられた音が鳴り、シーケンサに並べればリズムを刻みはじめます。
気分はさながら、パッドを叩いてヒップホップのトラックを作るちょっと怖めの人だ。

シンセシス

Renoiseは標準でシンセサイザ3を持たないのですが、短い音声サンプルをループさせることでオシレータの代わりになります。
このときに使用する波形はAKWF Freeなどを用いると良いでしょう。1ループ分の波形が大量に収録されています。
さらに、波形を掛け合わせたり、エンベロープを適用したり、標準搭載のDSP(Digital Signal Processor)エフェクタによってフィルタやリバーブを掛けたりすることができます。
これであなたも、何かよく分からないパラメータを触って確認してはニヤニヤしてるキモいオタクだ。
AKWF
1ファイルがサンプル長600であるAKWFの場合、TransposeとFinetuneをそれぞれ-2に設定すると音程がぴったり合います。

おわりに

ここまでお読みいただき感謝します。
音楽で遊ぶということに少しでも興味を持ってもらい、あわよくばRenoiseを使ってもらおうという魂胆の記事でした。
「あわよくば」を泡浴場と書くとちょっといやらしさがありますよね。そんな締め方でいいのか。

ついでにRenoiseを使用して自分が最近作った曲を貼っておきます。

https://soundcloud.com/sdmkun/sweetie-bit-girls
https://soundcloud.com/sdmkun/encrypted

そんな締め方でいいのか。


  1. DigitalAudioWorkstationです。DAWなどで作曲することをDTM(DeskTopMusic)と言ったりします。

  2. これを作曲されたのはsheさんという方です。Renoise愛用アーティストとして公式に取り上げられています。

  3. オシレータやフィルタ等を積んでおり、音色を作って音を出すことができる楽器。